結論
広告関連42社の有価証券報告書から、管理職に占める女性比率・男性の育児休業取得率・男女の賃金の差異を抜き出して並べました。女性管理職比率は0.0%から79.2%まで開きがあり、同じグループ内でも会社によってまったく違います。年収だけでは見えない働き方の違いが、この3指標に表れます。
出典: 各社有価証券報告書(原典PDF)/最終確認日: 2026年9月30日
なぜこの3指標を見るのか
女性活躍推進法と育児・介護休業法にもとづき、上場企業は有価証券報告書で次の3つを開示しています。
- 管理職に占める女性労働者の割合 ── 昇進の実態が表れる
- 男性労働者の育児休業等取得率 ── 制度が実際に使われているかが表れる
- 労働者の男女の賃金の差異 ── 職種構成・等級分布・在籍年数の偏りが表れる
求人票や採用サイトには載らない数字です。しかもグループ会社ごとに個別開示されているため、「グループ名」ではなく「所属する会社」の単位で比較できます。
博報堂DYグループ28社の数値
博報堂DYホールディングスは、有価証券報告書でグループ28社の指標を個別に開示しています。広告業界でこの粒度の開示は例がありません。
| 会社 | 女性管理職比率 | 男性の育休取得率(全従業員) | 賃金差異(全労働者) | (正規雇用) |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社博報堂 | 9.5% | 100.0 | 72.3% | 73.5% |
| 株式会社大広 | 10.0% | 161.5 | 71.9% | 72.0% |
| 株式会社読売広告社 | 9.9% | 100.0 | 76.0% | 78.8% |
| 株式会社Hakuhodo DY ONE | 27.2% | 81.8 | 74.4% | 74.0% |
| ソウルドアウト株式会社 | 16.3% | 100.0 | 74.3% | 79.1% |
| 株式会社オプト | 20.7% | 100.0 | 76.2% | 76.2% |
| 株式会社博報堂プロダクツ | 19.8% | 57.7 | 82.0% | 80.2% |
| 株式会社TBWA\HAKUHODO | 21.7% | 100.0 | 73.6% | 72.1% |
| 株式会社大広WEDO | 33.3% | ― | 79.8% | 80.3% |
| アイビーシステム株式会社 | 22.2% | 100.0 | 65.6% | 87.1% |
| 株式会社アド・プロ | 77.1% | ― | 84.0% | 72.1% |
| 株式会社セレブリックス | 21.2% | 78.9 | 86.9% | 87.4% |
| 日本トータルテレマーケティング株式会社 | 23.0% | 66.7 | 61.1% | 77.0% |
| 株式会社エクスペリエンスD | 0.0% | 100.0 | 62.5% | 72.1% |
| 株式会社パックスグループ | 14.6% | 100.0 | 59.1% | 67.9% |
| 株式会社博報堂アイ・スタジオ | 16.7% | 100.0 | 79.9% | 79.8% |
| 株式会社九州博報堂 | 9.1% | 50.0 | 64.5% | 68.7% |
| 株式会社博報堂DYトータルサポート | 40.6% | 100.0 | 75.4% | 74.1% |
| 株式会社博報堂DYアイ・オー | 79.2% | 100.0 | 99.6% | 105.8% |
| 株式会社アイヴィジット | 35.3% | 150.0 | 67.9% | 92.7% |
| 株式会社スパイスボックス | 0.0% | 50.0 | 60.2% | 61.7% |
| 株式会社博報堂Gravity | 20.0% | 33.3 | 72.1% | 71.9% |
| 株式会社オズマピーアール | 34.5% | 83.3 | 76.2% | 76.4% |
| 株式会社エッジ・インターナショナル | 39.3% | 100.0 | 80.4% | 78.3% |
| データスタジアム株式会社 | 9.1% | 100.0 | 89.8% | 82.8% |
| 株式会社読広クロスコム | 12.5% | ― | 75.6% | 74.6% |
| 株式会社博報堂テクノロジーズ | 10.0% | 86.7 | 82.4% | 83.2% |
| 株式会社博報堂コネクト | 21.1% | 50.0 | 52.5% | 82.9% |
※第23期(2026年3月31日現在)。「―」は有価証券報告書に「*」(集計対象となる従業員がいない)と記載されているものです。賃金の差異は男性を100としたときの女性の割合。
グループ内で女性管理職比率は0.0%から79.2%まで分布しています。中核の株式会社博報堂は9.5%、デジタル領域の株式会社Hakuhodo DY ONEは27.2%です。
なお、株式会社大広の161.5%や株式会社アイヴィジットの150.0%のように100%を超える取得率が出ているのは、育児休業に加えて「育児目的休暇」を含める算出方法(法令で複数の算出方法から選択できる)を採用しているためです。前年度に生まれた子について当年度に取得した場合も分子に含まれるため、100%を超えることがあります。
電通グループ5社の数値
| 会社 | 女性管理職比率 | 男性の育休取得率 | 賃金差異(全労働者) | (正規雇用) |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社電通グループ(持株会社) | 21.7% | 無期雇用社員 100% | 79.2% | 79.2% |
| 株式会社電通 | 14.4% | 94.0% | 71.3% | 76.9% |
| 株式会社電通デジタル | 26.0% | 正社員 98.7% | 77.7% | 77.5% |
| 株式会社電通総研 | 6.5% | 76.5% / 92.6% | 74.6% | 75.8% |
| 株式会社電通コーポレートワン | 34.6% | 正社員 100% | 57.4% | 66.0% |
※第177期(2025年12月31日現在)。
サイバーエージェントグループ4社の数値
| 会社 | 女性管理職比率 | 男性の育休取得率 | 賃金差異(全労働者) | (正規雇用) |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社サイバーエージェント | 28.5% | 60.7% | 75.2% | 77.1% |
| 株式会社Cygames | 12.3% | 87.2% | 84.4% | 84.0% |
| 株式会社AbemaTV | ― | 64.7% | 84.7% | 84.8% |
| 株式会社シーエー・アドバンス | ― | 28.6% | 111.0% | 88.3% |
※第28期(2025年9月30日現在)。
その他の上場企業5社の数値
| 会社 | 女性管理職比率 | 男性の育休取得率 | 賃金差異(全労働者) | (正規雇用) |
|---|---|---|---|---|
| 株式会社Speee | 12.2% | 89.5% | 71.5% | 75.8% |
| Septeni Japan株式会社 | 27.4% | 56.3% | 84.8% | 85.0% |
| Septeni Ad Creative株式会社 | 23.1% | ― | ― | ― |
| SEPTENI CORE株式会社 | 31.6% | ― | ― | ― |
| 株式会社電通ダイレクト | 32.1% | ― | 66.8% | 71.8% |
※Speeeは第18期(2025年9月30日現在)、セプテーニグループ各社は第35期(2025年12月31日現在)。セプテーニ・ホールディングス(提出会社)は公表義務対象外のため記載省略。「―」は有価証券報告書に「-」と記載されているものです。
42社を横断して見えること
1. 中核の広告会社ほど女性管理職比率が低い傾向
| 会社 | 女性管理職比率 |
|---|---|
| 株式会社博報堂 | 9.5% |
| 株式会社電通 | 14.4% |
| 株式会社大広 | 10.0% |
| 株式会社読売広告社 | 9.9% |
| 株式会社Hakuhodo DY ONE(デジタル) | 27.2% |
| 株式会社電通デジタル(デジタル) | 26.0% |
| 株式会社サイバーエージェント | 28.5% |
総合広告会社の中核4社(博報堂・電通・大広・読売広告社)はいずれも10%前後である一方、デジタル領域の会社は26〜28%と差があります。設立年次や職種構成の違いが背景にあると考えられますが、本記事では数字の提示にとどめます。
2. 賃金差異は60〜80%台に集中する
42社の多くが全労働者ベースで60〜85%の範囲に収まります。これは広告業界に限らず日本企業に広く見られる水準です。
3. 母数が小さい会社では極端な数字が出る
女性管理職比率0.0%や79.2%、賃金差異528.0%(パート・有期)といった数値は、対象人数が少ないことによる振れである場合があります。有価証券報告書にも個別の注記が付されています。
- 株式会社スパイスボックスのパート・有期528.0%: 「女性は賃金が比較的高い契約社員とアルバイトで構成されているのに対し、男性はアルバイトのみで構成されているため、数値が大きな水準となっております」
- 株式会社博報堂テクノロジーズのパート・有期19.8%: 「男性は高い報酬水準にある職種であるため、賃金差異が大きく算出されております」
会社側が注記で理由を説明している数値については、その説明を併せて読む必要があります。
この数値の限界
- 賃金差異は「同じ仕事の男女で差がある」ことを意味しない。職種・等級・勤続年数・雇用形態の構成差が大きく影響します
- 男性の育休取得率に取得日数は含まれない。1日でも取得すればカウントされます。また算出方法が複数あり、100%を超えることがあります
- 出向者は出向元の従業員として集計されます(博報堂DYの提出会社は出向者で構成されるため、提出会社単独の指標は開示されていません)
- 「―」は有価証券報告書に記載がない、または集計対象の従業員がいないことを示します。当サイトでは推測で埋めません
- 本記事は公開されている法定開示情報を整理したものであり、各社の労働環境の優劣を評価するものではありません
給与水準そのものは 広告代理店の年収一覧 にまとめています。会社別の詳細は 電通 / 博報堂 / サイバーエージェント をご覧ください。
まとめ
- 広告関連42社の女性管理職比率は 0.0%〜79.2%、男女の賃金差異は 52.5%〜111.0%
- 博報堂DYホールディングスはグループ28社の指標を個別開示しており、業界で最も粒度が高い
- 総合広告会社の中核は女性管理職比率10%前後、デジタル領域の会社は26〜28%
- 賃金差異は職種・等級・雇用形態の構成差を反映するもので、同一労働の男女差を示すものではない
よくある質問
男女の賃金の差異が100%を超えている会社があるのはなぜですか?
女性の平均賃金が男性を上回っている場合に100%を超えます。本記事の対象では株式会社シーエー・アドバンスが111.0%です。なおこの指標は職種・等級・勤続年数・雇用形態の構成差を反映するもので、同一労働の男女差を示すものではありません。
男性の育児休業取得率が100%を超えるのはなぜですか?
算出方法が法令で複数認められており、育児休業に加えて「育児目的休暇」を含めて算出している会社があるためです。株式会社大広の161.5%、株式会社アイヴィジットの150.0%がこれに該当します。前年度に生まれた子について当年度に取得した場合も分子に含まれます。
広告業界の女性管理職比率はどのくらいですか?
本記事で確認した42社では0.0%から79.2%まで分布しており、業界の代表値として1つの数字を示すことはできません。総合広告会社の中核4社(博報堂・電通・大広・読売広告社)は10%前後、デジタル領域の会社は26〜28%です。
どの会社がグループ各社の指標を開示していますか?
株式会社博報堂DYホールディングスが有価証券報告書でグループ28社の指標を個別に開示しています。広告業界でこの粒度の開示は他にありません。
出典
- 株式会社博報堂DYホールディングス 第23期 有価証券報告書「第4 提出会社の状況 5 従業員の状況等 ⑤管理職に占める女性従業員の割合、男性従業員の育児休業取得率及び従業員の男女の賃金の差異」(PDF 80〜81ページ)
- 株式会社電通グループ 第177期 有価証券報告書
- 株式会社サイバーエージェント 第28期 有価証券報告書
- 株式会社Speee 第18期 有価証券報告書(PDF 11ページ)
- 株式会社セプテーニ・ホールディングス 第35期 有価証券報告書(PDF 8ページ)
最終確認日: 2026年9月30日